中学の教科書で読んだであろう鴨長明「方丈記」。
最後まで読むとそこには違う世界が。
「ゆく河の流れは絶えずして」の名文句を残し、
隠者の悟りを開いたかの如きに見えながら、
人生の終盤においても
弱音を吐き、世間への執着を隠さず、
ついに安住の地を見出し得ない、
結局、生半可で深みのない思想である。
とじつに手厳しい、
しかし的を射た解説に
「中世の随筆から何か得るものがあるのでは?」と
期待した読者は動揺する。
私も大きくずっこける。
が、そのいかにも人間臭いところに、
800年の時を経て、やはり同じく日々あたふた、
揺れ続ける自分を重ね、
この人とその文章に
最大限の親しみと魅力を感じてしまうのだ。